立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するとされた事例(最高裁・平成27年11月20日判決)

コラム2016-05-26

1 事案の概要

被相続人は、罫線が印刷された1枚の用紙に、同人の遺産の大半をYに相続させる内容の自筆証書遺言を作成しました。

被相続人が死亡した後、遺言書が発見されたのですが、その遺言書には、その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線が引かれていました。遺言書の管理状況からこの斜線は、被相続人が書いたものであることが認められました。

Xは、このような斜線が引かれていたことは、民法1024条前段の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、遺言は撤回されたものとみなされると主張しました。

第1審、原審とも、Xは敗訴しました。その理由は、斜線が引かれた後も遺言書の元の文字が判読できる状態である以上、遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段により遺言を撤回したものとみなされる「故意に遺言書を破棄したとき」には該当しないというものでした。

2 最高裁の判断

最高裁は以下のとおり判示して、Xの請求を認容しました。

赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の一般的な意味に照らすと、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言のすべての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから、民法1024条前段の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、遺言は撤回されたものとみなされる。

3 判決のポイント

遺言書の元の文字が判読できる場合に民法1024条前段の「破棄」に該当するかどうかという点は、学説上、争いがありました。

この点、最高裁は、元の文字が判読できる場合であっても、その行為の一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言のすべての効力を失わせる意思の表れとみられる行為があったときは、民法1024条前段の「破棄」に該当するとの判断を示しました。

本件のような遺言書の文面全体に斜線を引く行為以外に、どのような行為が元の文字が判読できたとしても「破棄」に該当するといえるのかについては今後の裁判例の集積を待つことになります。

とはいえ、元の文字が判読できる場合であっても「破棄」に該当する場合があることを明らかにした点で、本判決は重要な意味を持つものといえます。

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