立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するか(最高裁平成27年11月20日判決)

コラム2018-06-25

遺言撤回の自由

 

遺言者は、いつでも、その遺言の全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。

この遺言の撤回は、何度でもできますし、理由も問われません。

 

遺言の撤回擬制

 

遺言の撤回は、「遺言の方式に従って」行われる必要がありますが(民法1022条)、次の場合は、遺言が撤回されたものとみなされます。

1.前の遺言が後の遺言と抵触するとき(民法1023条1項)

2.遺言の内容が、遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触するとき(民法1023条2項)

3.遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条)

 

赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するか(最高裁平成27年11月20日判決)

 

遺言者が故意に遺言書を破棄したときに該当するかどうかが争われた判例があります(最高裁平成27年11月20日判決)。

この判例の事案は、被相続人は罫線が印刷された1枚の用紙に遺産の大半をXに相続させる内容の遺言書を作成したが、被相続人の相続開始後に発見された遺言書には、その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで、被相続人が故意に引いた1本の斜線が引かれていたというものです。

この斜線を引く行為が「故意に遺言書を破棄したとき」に該当すれば、遺言は撤回されたものとみなされますが、これに該当しない場合は、抹消行為であるとしても、民法968条2項の変更の方式(自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」)を守っていないため、その効力は生じない(もともとの遺言の効力が生じる)ということになります。

最高裁は、「本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は,その行為の有する一般的な意味に照らして,その遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから,その行為の効力について,一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。」とし、民法1024条の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当すると判断しました。

この判例は事例判断ではありますが、破り捨てた場合のように明らかに破棄したというような場合でなくとも、そして、遺言書の文言自体は判読可能であるとしても、社会通念に照らし、「故意に破棄した」と判断される場合があることを示した重要な判例であるといえます。

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年6月25日時点の法律に基づき執筆しています。 

 

TOPへ