民法によると、時効期間が満了するだけでは時効の効力は発生せず、当事者が援用することによってはじめて効力が発生します(民法145条)。
一方、民法によると、時効によって利益を受けるものが相手の権利を認めた場合(例えば、金銭債務の債務者がその債務の支払い義務を認めた場合)、時効期間がリセットされ、そこからまた時効期間がスタートするとされています(民法152条1項)。これを権利の承認による時効の更新といいます。
では、時効期間が満了したあとに、権利の承認があった場合、債務者は時効を援用することができるのでしょうか。
この点、最高裁は、時効期間満了後に権利の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方としては、もはや時効の援用をしなものと考えるであろうから、その後は、債務者に時効の援用を認めないとするのが信義則に照らし、相当であるとしています(最高裁昭和41年4月20日判決)。
したがって、原則としては、権利の承認があった場合は、もはや時効の援用はできないということになりそうです。
もっとも、最高裁の理由付けは、権利の承認によって時効の援用権が消滅するというものではなく、時効の援用権が存在することを前提に、信義則を理由にその行使を認めるべきではないというものであると思われ、そうすると、信義則に反しない場合は、権利の承認があったあとも、時効の援用ができることもありうるということになりそうです。
時効期間満了後に債務の承認をしてしまったというケースでも、時効の援用ができる可能性はあります。このような問題で、お困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。
立川の弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は令和3年2月23日に執筆しています
Last Updated on 2023年8月29日 by takemura_jun