立川の弁護士に法律相談なら当法律事務所へ

法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

借地借家法の適用を受ける賃貸借契約とは?

借地借家法のマニアックな論点を解説していく「マニアック借地借家法」第1弾。

 

今回のテーマは「借地借家法の適用を受ける建物賃貸借契約とは?」です。

 

借地借家法1条によれば、借地借家法は「建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをする」ものです。

 

「特別の定めをする」というのは、一般法である民法に対する特別法であるという意味です。

どういった点が特別であるかということの詳細については、別の機会に委ねたいと思います。

 

そうすると、「建物の賃貸借の契約」であれば、借地借家法の適用がある、ということになります。

 

ただし、すべての「建物の賃貸借の契約」について、借地借家法の適用があるかというとそうではありません。

 

借地借家法40条に規定があるのですが、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には借地借家法の適用がありません。

 

この「一時使用のための賃貸借契約」については、詳しくは、当事務所のコラム「借地借家法25条の「一時使用」とは?」をご参照ください。コラムの内容は、一時使用のための借地契約についてのものですが、一時使用のための借家契約についてもあてはまります。

 

さて、話は戻って、「建物の賃貸借の契約」とは、どのような契約なのでしょうか。

 

単純そうで、そう単純ではありません。

 

まず、建物の使用目的には限定がありません。居住用であっても、店舗用であっても、建物の賃貸借契約であれば、借地借家法の適用があります。

 

ただし、居住用の賃貸借契約については、借地借家法36条と38条5項に特別な条項があることには注意が必要です。

 

次に、借地借家法は、使用貸借契約には適用がありません。このことは、文言上は明確ですが、賃貸借契約と使用貸借契約は区別が難しい場合があります。この問題については、当事務所のコラム「賃貸借契約と使用貸借契約の区別」をご参照ください。

 

そして、「建物」についてです。

 

判例(最高裁昭和42年6月2日判決)によれば、借地借家法1条の「建物」とは、「障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するもの」であるとされています。

 

この要件を満たすのであれば、物理的に建物の一部であるとしても、借地借家法1条の「建物」であり、借地借家法の適用の適用を受けることになります。

 

裁判例では、屋上、鉄道の高架下の店舗、ビニールハウス、スーパーマーケットまたは駅ビルの一区画、駐車場などが「建物」該当性を争われており、「建物」に該当するかどうかの判断は難しい場合があります。

 

最近では、シェアオフィスの「建物」該当性が問題となる裁判例があり、肯定例と否定例が分かれています。

 

この問題で注意するべきなのは、判例の「建物」の定義、すなわち「障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するもの」かどうかを個別具体的に検討することが必要であって、「屋上だから建物ではない」「ビニールハウスだから建物である」というような、建物の種類で建物であるかどうかを判断してはならないということです。

 

判断に迷ったときはぜひとも弁護士に相談してください。

 

 

 

Last Updated on 2024年1月9日 by takemura_jun