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法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

借地借家法26条(法定更新の要件と効力)(マニアック借地借家法第3弾)

借地借家法を深掘りして解説していく「マニアック借地借家法」第3弾。

今回のテーマは「借地借家法26条(法定更新の要件と効力)」です。

借地借家法26条1項は、普通賃貸借契約については、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を更新しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなすと規定します。

したがって、例えば、6か月前までに通知をせず、3か月前に通知をしたというような場合、契約は更新したものとみなされることになります。

では、1年前から6か月前までの間に通知さえすれば、法定更新の効力は生じずに、契約は期間満了により終了するのでしょうか。

これについては、借地借家法28条に規定があり、賃貸人が通知をするにあたっては、同条にいう正当事由を備えることが必要です。

一方、賃借人が通知をするにあたっては、正当事由は不要です。

ちなみに、転借人がいる場合については、賃貸人は、賃借人に加えて、転借人に対しても通知をしなければ、契約が期間満了により終了することを転借人に主張することができません(借地借家法34条1項)。

正当な事由を備えた通知をすれば、契約は必ず期間満了により終了するかというとそうではありません。

借地借家法26条2項によれば、通知がされたとしても、期間満了後も賃借人が建物の使用を継続し、それに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合は、契約を更新したものとみなされてしまいます。

また、借地借家法26条3項によれば、転借人がいる場合、転借人が建物の使用を継続した場合は、賃借人が建物の使用を継続しているものとみなされ、契約を更新したものとみなされてしまいます。

さて、続いて、「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」という規定について見ていきましょう。

まず、更新したものとみなされるので、賃貸人が反証することにより契約更新を否定することができないという効果があります。

以前、別のコラムで解説したので、そちらをご覧ください。

次に、この「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」という文言からすると、従前の契約と同じ期間になりそうにも思えますが、借地借家法26条1項には但書があり、期間については、定めがないものとなります。

そうすると、一旦更新されたものとみなされた契約については、もはや借地借家法26条の適用はないということになります。

その場合、どうなるかというと、賃貸人も賃借人も、いつでも解約の申入れをすることができます(民法617条)。

ただし、賃貸人からの解約の申入れは、借地借家法28条に規定する正当事由を備える必要があり、さらに、借地借家法27条により、契約終了には解約申入れから6か月経過することが必要です。

一方、賃借人からの解約の申入れは、正当事由は不要であり、また、民法617条1項により、解約申入れから3か月を契約することにより終了します。

では、契約に保証人がいる場合、更新後も、保証人は保証債務を負担することになるのでしょうか。

保証契約は賃貸借契約とは別の契約ですので、借地借家法26条で賃貸借契約が更新されたものとみなされるからといって、必ずしも、保証契約の効力が当然に更新された賃貸借契約にまで及ぶとはいえないからです。
この点については、判例があり(最高裁平成9年11月13日)、判例は、借地借家法の適用のある建物の賃貸借契約については、契約の更新が原則とされており、保証人となろうとする者も、契約が更新されることは当然予測できるのであるから、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がないかぎり、更新後の賃貸借契約についても保証する趣旨で保証契約をしたものというべきとしており、更新後の賃貸借契約にも、保証契約の効力が及ぶことを明らかにしています。
ただし、判例は、賃貸人が保証債務の履行を請求することが信義則に反する場合は、保証債務の履行を請求できないとしていることには注意が必要です。
実際に、賃貸人が漫然と長期間にわたって賃料不払いを放置し保証人にも連絡しなかったという事案について、保証人に対する請求を信義則違反であるとして認めなかった裁判例もあります。

Last Updated on 2024年1月25日 by takemura_jun