立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

自筆証書遺言について②(自書の要件)

コラム2016-02-12

民法968条によれば、自筆証書遺言は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し」なければならないとされています。

したがって、ワープロ等で作成されたものは、無効となってしまいます。

では、手が震えるなどするため文字を書くことが困難な者が他人の添え手による補助を受けて遺言を作成した場合、「自書」したといえるのでしょうか。

この点につき、最高裁(昭和62年10月8日判決)は、自筆証書遺言は他の方式の遺言と異なり証人や立会人の立会を要しないなど、最も簡易な方式の遺言であり、それだけに偽造、変造の危険が最も大きく、遺言者の真意に出たものであるか否かをめぐつて紛争の生じやすい遺言方式であるといえるから、「自書」の要件については厳格な解釈をするべきとしたうえで、病気その他の理由により他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、

① 遺言者が証書作成時に自書能力(遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力)を有すること、

② 他人の添え手が、単に始筆もしくは改行にあたり、もしくは、字の間配りや行間を整えるため、遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、または、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること、

③ 添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できること、

が認められる場合には有効であるとの判断を示しました。

したがって、結論としては、他人の添え手による補助を受けて遺言を受けて遺言を作成した場合であっても「自書」の要件を満たす場合があるということになります。

しかし、後々の紛争を回避するという観点からは、文字を書くことに他人の補助が必要なのであれば、自筆証書遺言ではない遺言の方式、具体的には、公正証書遺言を作成するべきと考えます。

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