立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

賃借人の原状回復義務と無断転借人の行為(最高裁平成17年3月10日判決)

コラム2017-12-06

賃借人の原状回復義務と無断転借人の行為(最高裁平成17年3月10日判決)

●事案の概要

 Xは、本件土地につき、Aとの間で、使用目的を資材置場とし賃貸人の承諾なしに転貸することを禁止する旨の約定のある賃貸借契約を締結し、Yはその賃貸借契約に基づくAの債務を連帯保証した。

 その後、Aは、Xの承諾を得ることなく、Bとの間で、使用目的を資材置場とする転貸借契約を締結した。Bは、本件土地を産業廃棄物の処分場として使用し、利益を得るつもりであったが、転貸借契約の締結にあたってはこのことを隠していた。

 Bが産業廃棄物合計約1160m3を投棄したことから(なお、Bは廃棄物処理法違反で罰金50万円の刑に処せられた)、Aは賃貸借契約を無断転貸及び用法違反を理由として解除し、賃借人であるA、連帯保証人であるYらに対し、産業廃棄物を撤去して本件土地を明け渡すよう催告した。その後、Aは本件土地を明け渡したが、投棄された産業廃棄物は放置されたままとなっていた。

 そこで、Xは、Yに対し、原状回復義務の不履行による損害賠償を求めた。

 原審(東京高裁平成14年7月9日判決)は、本件土地への産業廃棄物の投棄は、専らBが単独で行った犯罪行為であり、Aは、Bへ無断転貸をしたものの、このような犯罪行為である産業廃棄物の投棄についてまで、賃貸借契約の解除に伴う原状回復義務として責任を負うものではなく、よって、連帯保証人であるYも責任を負わないと判断した。

 これに対して、Xが上告した。

●裁判所の判断

 不動産の賃借人は、賃貸借契約上の義務に違反する行為により生じた賃借目的物の毀損について、賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うことは明らかである。前記事実関係によれば、Aは、本件賃貸借契約上の義務に違反して、Bに対し本件土地を無断で転貸し、Bが本件土地に産業廃棄物を不法に投棄したというのであるから、Aは、本件土地の原状回復義務として、上記産業廃棄物を撤去すべき義務を免れることはできないというべきである。

●弁護士竹村淳のコメント

 本件は、転借人が予期せず産業廃棄物の投棄という犯罪行為をしたという事実があり、原審はこの点をもって賃借人に原状回復義務を負担させるのは妥当ではないと考えたと思われます。

 しかし、賃借人が無断転貸をした場合は、賃貸人が転借人の行為につき責任を負担する理由がなく、転借人の行為についての責任は、予見可能性の有無にかかわりなく、賃借人がすべて負担すべきと考えられます。したがって、最高裁の結論は、妥当なものと考えます。

弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
なお、当記事は平成29年12月5日当時の法律が前提となっています。

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