立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

力士は「労働者」なのか(力士の労働者性)

コラム2018-01-06

力士は「労働者」なのか(力士の労働者性)

力士と日本相撲協会との契約関係は労働契約なのか。それとは別の契約類型なのか。この問題についての裁判例は、判断が分かれています。

東京地裁平成25年3月25日判決は、以下のとおり、労働契約ではなく、また、準委任契約でもなく、有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であると判断しました。

相撲は、個々の力士が相撲道に精進することによって培った技量を本場所相撲等において発揮することを本質的な内容とするものであり、力士が日本相撲協会に対して、相撲競技の公開実施に際し、相撲道に精進することによって培った個々の技量を相撲により発揮する義務を負い、他方、日本相撲協会が、力士に対し、その対価として給与等を支払う義務を負うことを中核的な要素とするものである。

しかし、力士と日本相撲協会との契約関係は、このような要素にとどまらず、日本相撲協会が相撲競技の公開実施等のために必要な人的物的設備を提供するといった要素もあるほか、力士は、日本相撲協会との契約に伴い、日本相撲協会の構成員としての身分、地位を取得、保持し、日本相撲協会から指示を受ける年寄の運営維持する相撲部屋に住み込んで、生活指導も含めてその指導を受け、日本相撲協会作成の服務規定のもと、その規律にも服するという要素も有しており、この点においては力士は日本相撲協会の組織に組み込まれているといえるし、しかも、こうした点は、力士と年寄、ひいては日本相撲協会との間の信頼関係を基礎に、継続的、集団的に行われている。

このように、力士と日本相撲協会との契約関係は、取引法原理になじみ難い側面も含む複合的な要素を有するものであると指摘することができる。

これらの点に、そもそも相撲自体は古代からあり、また、江戸時代の勧進相撲が現代の相撲社会の基礎をなしているという相撲の歴史、すなわち、力士と日本相撲協会の関係(相撲部屋制度、師匠との関係も含む。)は、民法制定以前から存在する関係が基本となっていると考えられることも併せ考慮すると、力士と日本相撲協会との契約関係は、民法の典型契約である労働契約や準委任契約に該当するものであるとみることは困難であり、むしろ、有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約と解するのが相当である。

一方、東京地裁平成23年2月25日決定は、以下のとおり、準委任契約類似の契約関係であると判断しました。

力士が日本相撲協会に対して負っている債務は、相撲道に精進し、これによって培った技量を前提に本場所相撲に出場することを基本的な内容とするものであって、日本相撲協会は、こうした力士による相撲競技という一種のパーフォーマンスの受託提供に対して、これを寄付行為において「有給」とみなし、適正な審査を実施した上、その技量と格付けに応じた報酬を力士養成員を含め個々の力士に支払うことを約したものと認めることができ、そうだとすると力士と日本相撲協会との間には、一種の有償による準委任類似の契約関係(民法656条、643条、648条1項)が成立しているものと解するのが相当である。

そして、労働契約法が適用されると判断した裁判例も存在するようです(東京地裁平成20年10月30日)。

このように、力士と日本相撲協会との契約関係については、現時点では確定的な見解があるとは言い難い状況であり、今後の裁判例の判断の蓄積が待たれます。

立川の弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年1月6現在の法律に基づき執筆しています。

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