立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

民法(相続法)改正ー預貯金の仮払い制度の創設

コラム2018-07-19

民法(相続法)改正ー預貯金の仮払い制度の創設

 

1 仮払い制度創設の必要性

 

相続人は被相続人が負担していた債務の弁済や葬儀費用の支払いをする必要がありますが、被相続人の有していた預貯金は遺産分割の対象財産であるため、相続人全員の同意を得ることができない場合は払い戻しを受けることができず、結果として、遺産分割協議が成立するまで、相続人が自己の固有の財産をもって債務を支払わなければならない状況が発生していました。

この点、家事事件手続法200条2項の仮分割の仮処分を用いることができるのではないかとの見解もありますが、同項は「遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき」に仮処分ができるとしており、限定的な場合にしか、用いることができないという問題がありました。

 

2 仮払い制度の概要

 

この問題につき、改正法(909条の2)は、相続開始時の預貯金の残高の3分の1に、払い戻しを求める相続人の法定相続分を乗じることによって求められる金額で、法務省令により定められる金額以下の金額については、他の相続人の同意がなくとも、単独で払い戻しが受けられることとしました。

この払い戻しを受けた預貯金については、払い戻しを受けた相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされます。

 

3 まとめ

 

払い戻しを受けられる金額には限度があることから、債務額が大きい場合は、この制度があっても、なお、相続人が固有の財産をもって支払いをしなければならない状況が発生する可能性があります。しかし、これまでの実務においては、事実上、相続人の全員の同意がないかぎり、預貯金の払い戻しを一切受けられなかったことからすると画期的な制度であり、肯定的に評価すべき改正であると考えます。

 

4 改正法の条文

 

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

 

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年7月19日時点の法律に基づき執筆しています。

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