立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

民法(相続法)改正ー配偶者居住権の創設

コラム2018-07-10

民法(相続法)改正ー配偶者居住権の創設

平成30年7月6日、民法(相続法)改正法案が参院本会議で可決・成立しました。

今回の記事では、改正事項のうち、タイトルの配偶者居住権の創設を取り上げます。

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が被相続人の財産に属する建物に相続開始の時に居住していた場合において、その建物の全部について無償で使用及び収益をする権利のことをいい、配偶者は、①遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされたとき、または、②婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他方配偶者に対し、配偶者居住権を目的とする遺贈をしたときに、この権利を取得するものとされました(改正1028条1項、改正同条3項、改正903条4項)。

そして、配偶者居住権を目的とする遺贈がされたときは、民法903条3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割において、対象不動産の持戻し計算を不要としました(対象不動産の価額を特別受益として扱わないことができる)。

例えば、被相続人の遺産が2000万円の自宅と2000万円の預貯金で、相続人が妻と子1名である場合、現行法では、法定相続分で遺産分割をした場合、妻が2000万円の自宅を取得すると、預貯金は1円も取得できなくなります。

これが改正法では、妻が遺贈により配偶者居住権を取得し、その評価額が1000万円であるとすると、配偶者居住権は持戻し免除の意思表示があったものと推定されることから、仮に配偶者居住権が1000万円の価値があるとすると、妻は、残りの遺産3000万円の2分の1、すなわち1500万円を取得することができ、自宅の権利(配偶者居住権が付いた所有権であるから2000万円-1000万円=1000万円の価値)を取得したとしても、なお、預貯金500万円を手にすることができることになります。

以上が配偶者居住権の概要ですが、配偶者居住権の評価をどのように行うのか、居宅兼店舗を遺贈した場合はどのように処理するのか、遺産分割方法の指定であるとされるいわゆる相続させる遺言がされた場合に本規定を適用または類推適用することができるのかなど、不明確な点が残されています。特に、配偶者居住権の評価については、これが理由で遺産分割協議が紛糾するおそれがあるといえるでしょう。

参考条文(改正法)

民法1028条
1 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

民法903条4項
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年7月10日時点の法律に基づき執筆しています。 

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