立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

民法改正ー賃貸借契約上の地位の承継(賃貸人の変動)

コラム2018-09-11

民法改正ー賃貸借契約上の地位の承継(賃貸人の変動)

1.賃貸人の地位の移転

 

XとYは、Xが所有する建物の賃貸借契約を締結しました。その後、XはYに賃貸した建物をZに売却しました。建物の新所有者Zは、Yに対し、自分が賃貸人の地位を承継したとして、賃料の支払いを求めました。賃借人Yは、建物の新所有者Zに対し、賃料を支払わなければならないのでしょうか。

この問題について、改正民法は、従来の判例を踏まえ、賃貸不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人の地位は、賃借人の同意がなくとも、当然に、譲受人に移転するものとし、ただし、賃貸不動産について所有権移転登記を経なければ、賃借人に対し、賃貸人の地位を主張できないとの規定を設けました(改正法605条の2第1項、第3項)。

したがって、設問についていえば、Zが所有権移転登記を経ていた場合は、YはZに対し賃料を支払わなければならないということになります。

2.賃貸人の地位の留保

 

では、前記設問の譲渡人Xと譲受人Zが賃貸人の地位を譲渡人Xに留保する合意をした場合、賃貸人としての地位は譲渡人Xに留保されるのでしょうか。

賃貸不動産を譲渡したとしても、賃貸人としての地位は留保しておきたいというビジネス上のニーズは存在します。しかし、譲渡人と譲受人との間の合意だけでは、賃貸人としての地位を留保できないということになると、譲渡人と譲受人は、賃借人から個別に賃貸人としての地位を譲渡人に移転する同意をとるということをしなければなりません。

この問題につき、判例は、譲渡人と譲受人との間で賃貸人の地位を譲渡人に留保する旨を合意したとしても、それだけで賃貸人の地位の留保を認めた場合、譲渡人が賃貸不動産を使用する権限を失い、賃貸不動産を賃借人に賃貸することができなくなった場合、賃借人の地位を失うなどの不測の損害を被るおそれがあるとして、譲渡人と譲受人との間の合意だけでは、賃貸人の地位を留保できないとの立場をとっていました(最高裁平成11年3月25日判決)。

この判例があるため、ニーズを実現するために賃借人から個別に同意をとるということが行われていたのですが、それは手間がかかりますし、判例のいう不測の損害を被るおそれに手当てができれば、譲渡人と譲受人との合意だけでも、賃貸人の地位を留保できるようにしてもよいのではないかとの考えから、この問題についての新たな規定を設けることになりました。

その結果、改正法では、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意のほかに、その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人の地位は譲受人に移転しないものとし、この場合、その後に譲受人と譲渡人との間の賃貸借契約が終了したときは,譲渡人に留保された賃貸人の地位は、譲受人に移転するとの規定が設けられることになりました(改正法605条の2第2項)。

3.まとめ

 

改正法605条の2第1項、第3項の規定は、従前の判例を明文化しただけのものといえますが、同条第2項の規定は、ビジネス上のニーズをふまえて新たに創設されたルールといえます。

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年9月11日時点の法律に基づき執筆しています。

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