立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

取締役会設置会社における代表取締役の解任手続きについて

コラム2018-12-15

1.設例

 取締役会設置会社であるX社には、取締役として、A、B、C、D、Eの5名がおり、うちAが代表取締役に選任されていた。

 ところが、Aは会社の財産を横領していた容疑で逮捕、勾留されてしまった。

 BらA以外の取締役は、Aが横領していた事実は確実であるとして、Aを代表取締役から直ちに解任したい。

 Bらはどのような手続きをとればよいのか。

2.代表取締役の解任を行う機関

 では、そもそも代表取締役の解任は、どの機関が行うのでしょうか。

 会社法によれば、取締役会設置会社における代表取締役の解任は、取締役会によって行うものとされています(会社法362条2項3号)。

 そうすると、代表取締役Aの解任を行うためには、取締役会を開催し、そこで解任の決議をする必要があるということになります。

 

3.取締役会の招集権者

 では、取締役会の招集は、誰が行うのでしょうか。

 この点、会社法366条1項は「取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する」と規定しており、取締役会を招集する取締役を定款または取締役会において定めていない場合は、各取締役が招集することができます。

 では、設問において、取締役会の招集権者を「代表取締役」としていた場合は、Bらは取締役会を招集できないのでしょうか。

 この点、会社法366条2項は、招集権者以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の招集を請求することができ、さらに、同条3項は、その請求があった日から5日以内に、請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、請求をした取締役が取締役会を招集することができると規定しています。

 したがって、設例において、取締役会の招集権者が代表取締役であるAと決められていたとしても、Bらは取締役会を招集することが可能です(ただし、逮捕・勾留されたAに対し、どのように取締役会の招集を請求するのかという問題があります)。

 なお、監査役も、会社法382条の報告義務との関連で必要がある場合は、招集権者に対し、取締役会の招集を請求することができます(会社法383条2項)。

4.取締役会の招集通知

 取締役会の招集は、取締役会の招集権者が、各取締役に対して、招集通知を発することによって行われます(会社法368条1項)。

 招集通知は、原則として開催日の1週間前に発する必要がありますが、この期間は定款の規定により短縮することができます(会社法368条1項)。

 また、取締役及び監査役全員の同意があるときは、以上の招集の手続きを経ることなく、取締役会を開催することができます(会社法368条2項)。

 ところで、取締役会で代表取締役を解職する場合、判例の立場によれば、解任の対象となる取締役は、取締役会の決議につき特別の利害関係を有するとされ(最高裁昭和44年3月28日判決)、議決に加わることができません(会社法369条2項)。

 では、取締役会の議題が代表取締役の解任のみである場合、対象となる取締役は議決に加わることができなくても、当該取締役に対し、招集通知を発する必要があるのでしょうか。

 この点、裁判例は、当該取締役に対しても招集通知を発する必要があるとしています(東京地裁昭和56年9月22日判決、東京地裁昭和63年 8月23日判決)。

 取締役会では、招集通知において示された事項以外についても審議することができることからすれば、これは妥当な判断といえるでしょう。

 次に、設例のように、対象となる取締役が欠席することが明らかな場合でも、当該取締役に対して、招集通知を発する必要があるのでしょうか。

 この点、弁護士竹村が調査した限りでは、該当する裁判例は見当たりませんでした。

 参加する可能性がありえなくはない名目的取締役の場合(最高裁昭和44年12月2日判決)とは異なり、逮捕・勾留中のように現実に参加不能な場合にまで招集通知を発する必要があるのか疑問はありますが、実務的には、招集通知を発することができるのであれば、発するべきでしょう(ただし、前述のように、逮捕・勾留されているような場合は、どのようにして通知を到達させるのかという問題があります)。

 

5.取締役会の決議

 取締役会の決議は、定款で別の定めがない限り、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います(会社法369条1項)。

 そして、決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない、つまり、定足数に算入されないところ(会社法369条2項)、既に述べたとおり、判例上、代表取締役の解任決議においては、対象となる取締役は特別の利害関係を有するとされており、これによれば、当該取締役は、定足数に算入されないことになります。

 したがって、設例においては、定款で別の定めがない限り、B、C、D、Eの4名の取締役のうちの過半数、すなわち3名以上が出席し、その過半数(4名出席のときは3名、3名出席のときは2名)の賛成によって、代表取締役Aの解任を決議できるということになります。

6.まとめ

 メディアでは代表取締役の解任が話題になっても、その手続きについてはほとんど触れられませんが、それなりに複雑な手続きを踏まねばならず、かつ、それに対象となる代表取締役の逮捕・勾留のようなイレギュラーな事態が生じると、理論的にも実践的にも様々な論点が生じることになります。

 手続きを誤れば解任が無効となりかねないことから、設例のような場面が生じた場合は、解任する取締役側は、会社法に精通した専門家(弁護士)の関与のもとに、手続きを慎重に進める必要があるでしょう。

立川の弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年12月15日に執筆しています。

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