合意相殺は全額払いの原則(労基法24条1項)に違反するのか
労基法24条1項「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定し、使用者は労働者に賃金の全額を支払わならないことを定めているため(これを賃金全額払いの原則といいます)、会社が労働者に対して何らかの債権を有している場合に、その債権と賃金を相殺することは、双方の合意があったとしても、労基法違反になるのではないかが問題となります。
この点につき、最高裁は、労基法24条1項の賃金全額払の原則の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除するのを禁止して、労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済的生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨を包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づきこの相殺に同意した場合においては、この同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、この同意を得てした相殺は労基法に違反するものではない、との判断をしました(最高裁平成2年11月26日判決)。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun