地主の承諾なしに借地権の譲渡・転貸はできるのか
1.民法の原則と借地借家法による修正
民法によると、賃貸人の承諾がない限り、賃借人は賃借権を譲渡・転貸することはできず、これに違反して、第三者に使用または収益させたときは、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます(民法612条)。
そうすると、借地権設定者の承諾なしに借地権を譲渡・転貸すると、契約を解除されてしまうことになりそうですが、借地借家法は、民法の原則を修正し、借地権者が借地権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡・転貸を承諾しないときは、借地権者は裁判所に対し借地権者の承諾に代わる許可を与えるよう申立てをすることができるという仕組みを設けました(借地借家法19条、20条)。
なお、借地上の建物を第三者に賃貸する場合は、外形上は第三者に土地を使用させているように見えるとしても、法的にはあくまでも建物を賃貸しているのであり、土地を賃貸しているのではいですから、借地上の建物の賃貸については、そもそも、借地権設定者の許可は不要です。
2.承諾に代わる許可の申立ての概要
承諾に代わる許可の申立てが認められる要件は、借地権の譲渡・転貸をしても借地権設定者に不利となるおそれがないことであり、その判断にあたっては、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡・転貸を必要とする事情その他一切の事情が考慮されます(同法19条、20条)。
裁判所は、判断をするにあたっては、特に必要がないと認める場合を除き、鑑定委員会の意見を聴かなければならないとされています(同法19条6項)。
そして、裁判所は、借地権者から借地権者設定者に対する金銭の支払いを許可の条件とすることができるとされています(同法19条1項)。
3.地主の対抗手段
では、借地権設定者は、借地権の譲渡・転貸をしても借地権設定者に不利となるおそれがない場合は、借地権の譲渡・転貸を受け入れざるをえないのでしょうか。
この点、借地借家法は、借地権者による承諾に代わる許可の申立てに対する借地権設定者の対抗手段として、借地権者による申立てがあった場合において、借地権設定者が自ら建物の譲渡及び借地権の譲渡・転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができるとの仕組みを設けています(同法19条3項)。
立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年11月8日時点の法律に基づき執筆しています。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun