立川の弁護士に法律相談なら当法律事務所へ

法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

借地上の建物を再築したとき、契約期間は延長されるのか(契約更新前のケース)

この記事を書いた人
立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

借地上の建物を再築したとき、契約期間は延長されるのか(契約更新前のケース)

1.事例

 

今回は事例を使って説明したいと思います。

Xさん(借地権者)とYさん(地主)は、建物の所有を目的とする期間30年の借地契約を締結しました。その契約では建物の種類に特に制限はなく、再建築を不可とする条項もありませんでした。その後、Xさんは借地上に木造の自宅建物を建築しました。しかし、25年が経過した頃、Xさんは、その建物を取り壊して鉄筋コンクリート造のマンションを作って賃料収入を得ようと考えるようになりました。そこで、XさんはYさんに対し、既存の建物を取り壊して、鉄筋コンクリート造のマンションを建築したいと伝えましたが、Yさんからは何の反応もありませんでした。Xさんは、何も言わないということはYさんは承諾したのだろうと考え、通知をしてから6か月後に既存の建物を取り壊し、マンションの建築工事を開始しました。しかし、工事を開始すると、XさんはYさんから「マンションを建てることは承諾していない」と抗議の連絡を受けました。これに対し、Xさんは「もう工事を始めたので、いまさらそんなことを言われても困ります」と述べて、工事を続行し、マンションを完成させました。その後、借地契約の期間が満了となったところ、XさんはYさんから、期間満了を理由に、土地の明渡しを求められました。

Yさんに借地契約の更新を拒絶する「正当な理由」がある場合、Xさんは、明渡しに応じなければならないのでしょうか。

 

2.地主の承諾がある場合の期間延長(借地借家法7条1項)

 

この点、借地借家法7条1項は、借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者また転借地権者による取壊しを含む)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築したときは、その建物を建築することについて、地主の承諾がある場合に限って、借地権は、承諾があった日または建物が建築された日のいずれか早い日から20年間存続すると規定しています。

この条文を事例にあてはめると、Xさんが新たに建築した建物は、残存期間を超えて存続すべき建物といえそうです。しかし、Yさんは「マンションを建てることは承諾していない」と抗議しているのですから、「承諾があった」とはいえないように思われます。

したがって、Xさんは、この条文の適用によって契約期間が延長されたと主張するのは難しいということになります。

 

3.地主の承諾の擬制(借地借家法7条2項)

 

しかし、Xさんが諦めるのは、まだ早いです。

借地借家法は、地主の承諾がなかったとしても、借地権者が地主に対して、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに建築する旨を通知した場合において、地主がその通知を受けた後2か月以内に異議を述べなかったときは、その建物を建築することについて、地主の承諾があったものとみなすという規定を設けています(同法7条2項)。

事例では、XさんはYさんに対し、残存期間5年を超えて存続することが明らかな鉄筋コンクリート造のマンションを新たに建築したいことを伝えており、これに対し、Yさんは少なくとも6か月間なにも回答しなかったのですから、この条文の要件を満たしているといえそうです。

したがって、事例では、地主の承諾があったとものとみなされ、契約期間が延長されることになり、期間満了を理由とするYさんの請求は認められないということになります。

 

4.まとめ

 

事例では、Xさんに軍配が上がることになりましたが、逆にいえば、Yさんが通知後2か月以内に異議を述べていたにもかかわらず、Xさんが建築を強行した場合は、期間満了により土地の明渡しを求められる可能性があったということになります。地主の立場からすれば、20年もの期間延長となり、場合によっては重大な不利益を受ける可能性があるわけですから、借地の返還を求めたいのであれば、借地人の動向には目を光らせることが重要ということになります。

なお、以上は契約更新前に建物がなくなったケースですが、更新後に建物がなくなった場合については、異なった規定が適用されることになります。これについては次回の投稿で解説します。

 

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年11月16日時点の法律に基づき執筆しています。

 

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun