Last Updated on 2016年4月5日 by takemura_jun
民法上、共同相続人の中に生前に贈与を受けたりして特別な利益を受けた者がいる場合、被相続人が相続開始時に有していた財産にその特別な利益の額を加えたものを相続財産とみなして、相続分を算定するとされています(民法903条)。
この条文の趣旨は、被相続人は特別な利益を受けたことは相続分の前渡しなのであり、これを考慮せずに相続分を算定することになれば、共同相続人間で不公平になるということにあります。
この特別な利益のことを「特別受益」といいます。
では、共同相続人のひとりが生命保険金を受け取った場合、生命保険金は遺産に含まれないとしても、特別受益に該当しないのでしょうか。
この問題につき、判例(最高裁・平成16年10月29日)は、生命保険金は、民法905条の特別受益に該当しないが、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、民法903条の類推適用により、生命保険金は、特別受益に準じて、相続分算定の基礎に加算するべきとの立場をとっています。
この特段の事情があるといえるかどうかはケースバイケースであり、非常に判断の難しい問題であるといえます。