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法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

パワーハラスメントの裁判例

1.福岡高判平20.8.25判時2032号52頁

海上自衛隊で上官が「お前三曹だろう、三曹らしい仕事をしろよ。お前は覚えが悪いな。バカかお前は、三曹失格だ」等の発言をしたという事案(パワハラを受けた自衛官は護衛艦内で自殺)で、上官の発言は心理的負荷を過度に蓄積させるもので指導の域をこえるものとして請求を一部認容したもの

2.東京地判平25.6.20判時2202号62頁

私立大学のラグビー部で選手の育成業務を受託した会社の従業員がヘッドコーチから、女だから駄目だ、女は気合いを入れられない、あいつは女だからチームのウォーミングアップで雰囲気を高めていくことはできないなどとの発言を受けたという事案で、女性であることを理由として,トレーナーとしての能力を否定する言動であり、トレーナーとしての業務の遂行を困難にさせるものであったとして、大学、監督、ヘッドコーチの不法行為責任を認め、請求を一部認容したもの

3.広島高松江支判平21.5.22労判987号29頁

他の社員に対し「何億円も使い込んでいる」などと中傷する発言をした社員に対する指導をした際に、その社員がその事実を否定したことから、「だったら証拠出せよ、それを。証拠持ってこい。使い込んだ証拠持ってこい、何億円の。」「言ったんだ。ちゃんと証拠取れているから。言ったって、事実証拠取れているから。発言内容の証拠取れているから、もう。出るとこに出ようか。民事に訴えようか。あなたは完全に負けるぞ、名誉毀損で。あなたがやっていることは犯罪だぞ。」「自分は面白半分でやっているかもわからんけど、名誉毀損の犯罪なんだぞ。」等述べたという事案において、人間性を否定するかのような不相当な表現を用いて叱責した点については,従業員に対する注意、指導として社会通念上許容される範囲を超えているものであり、不法行為を構成するとしたもの。

4.岡山地判平24.4.19労判1051号28頁

銀行において、ミスをした社員(なお、この社員は脊髄空洞症による療養復帰直後であり,かつ,同症状の後遺症があった)に対し「もうええ加減にせえ、ほんま。代弁の一つもまともにできんのんか。辞めてしまえ。足がけ引っ張るな。」「一生懸命しようとしても一緒じゃが、そら、注意しよらんのじゃもん。同じことを何回も何回も。もう,貸付は合わん、やめとかれ。何ぼしても貸付は無理じゃもう、性格的に合わんのじゃと思う。そら、もう1回外出られとった方がええかもしれん。」「足引っ張るばあすんじゃったら、おらん方がええ。」等の発言があったという事案につき、このような発言は健常者であっても精神的にかなりの負担を負うものであり、また、脊髄空洞症によ療養復帰直後であり,その後遺症が存する者にとっては、さらに精神的に厳しいものであったと考えられ、それについて上司が全くの無配慮であったことに照らすと、パワーハラスメントに該当するとしたもの。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun