立川の弁護士に法律相談なら当法律事務所へ

法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

最高裁裁判官国民審査とは

この記事を書いた人
立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

憲法79条2項は「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする」と規定します。

これは、既に任命されている最高裁裁判官を国民が審査する解職の制度であり、最高裁に対する民主的コントロールを及ぼすための手段であると理解されています。

憲法は国民審査の細則を法律に委任しており(憲法79条4項)、これを受けて、最高裁判所国民審査法が制定されています。

国民審査の投票方法は、罷免を可とする裁判官については、投票用紙の該当欄に×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については何の記載もしないで、投票箱に入れなければならないとされています(国民審査法15条)。

そして、罷免を可とする投票が罷免を可としない投票を上回れば、その裁判官は罷免されます(憲法79条3項、国民審査法32条)。

このような国民審査法の投票方法ですと、罷免を可とすべきか判断がつかないという投票も、罷免を可としない票としてカウントされることになりますので、この点について、かねてより疑問が呈されてきました。

この点につき、最高裁は「最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る。」「解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものと、そうでないものとの二つに分かれるのであつて、前者が後者より多数であるか否かを知らんとするものである。論旨にいう様な罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に『罷免を可とするもの』に属しないこと勿論だから、そういう者の投票は前記後者の方に入るのが当然である」という立場をとっています(最高裁昭和27年2月20日判決)。

国民審査の投票方法については、罷免を可とする裁判官に×、罷免を可としない裁判官に○、いずれかわからない裁判官については白票(棄権扱い)とする方法も考えられるところですが、最高裁は、このような方法だと、白票が増えて、少数の者の意見によって罷免される事態が生じることが懸念されるとしています(前掲最高裁判決)。

もっとも、国民審査法をこのように改正しても、罷免を可とする投票が罷免を可としない投票を上回った場合に罷免となる以上、「投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときに、裁判官は罷免される」とする憲法79条3項の文言に直ちに違反しているとはいえないですし、罷免を可とする投票が一定数以上なければならないとすれば、最高裁の懸念は解消できるように思われます。

なお、平成29年10月22日に実施される国民審査の対象となる裁判官は小池裕、戸倉三郎、山口厚、菅野博之、大谷直人、木沢克之、林景一の各裁判官です。

Last Updated on 2017年10月13日 by takemura_jun