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賃金債権の放棄の可否(労基法24条1項)

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立川弁護士 竹村淳
弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

目次

賃金債権の放棄の可否(労基法24条1項)

Xが退職時に受領できる退職金は約400万円であったが、XはYを退職にあたって「XはYに対し、いかなる性質の請求権も有しないことを確認する」旨の記載のある書面に署名してYに差し入れており、退職金債権を放棄する旨の意思表示をしたことが認められるという事案において、Xは退職金債権を放棄する旨の意思表示は労基法24条1項のいわゆる全額払いの原則に反するものであって無効であるとの主張をしました。

これに対し最高裁は、全額払の原則の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護を図ろうとすることであるから、労働者が自ら賃金債権を放棄する場合に、全額払いの原則によって直ちに放棄の効力が否定されることにはならないが、全額払の原則の趣旨などに鑑みれば、放棄の意思表示の効力を肯定するには、放棄の意思表示が「自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在することが必要」との基準を示し、当該事案においては、放棄は自由な意思に基づくものであって有効としました(最高裁昭和48年1月19日判決・シンガー・ソーイング・メシーン事件)。

いかなる場合に「自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在する」といえるかという点については事案に即した判断が求められますが、判例は、単に減額された賃金を受け取っていただけでは足りないとしています(最高裁平成15年12月18日判決)。

弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成29年12月21日時点の法律に基づき執筆しています。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun

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