前回の設例の解答は「設例の事実関係だけでは判断がつかない」だと思います。
と答えだけ書いても意味がないので解説をします。
この問題は簡単そうに見えて、実はいろいろと複雑な問題を含んでいます。
ということで、まずは民法の規定を確認したいと思います。
民法上、請負契約は「請負人が仕事の完成を約束し、注文者がその成果に対して報酬を支払う契約」であるとされています(民法632条)。
つまり、民法の条文からすると、請負契約を締結した以上、請負人は仕事を完成させる義務を負っているのであり、仕事の途中で目的物が焼失しようが破損しようが、仕事の完成が不可能(例えば、ある機械の修理を頼まれたが、その機械自体が無くなってしまったような場合)にならない限り、仕事を完成させなければならないのです。
したがって、請負人は注文者が工事の続行を求めた場合は、これを拒否することができないということになります。
では、請負人は目的物が焼失したり破損したことによって余分にかかる費用を請求できるのでしょうか。
これについては、請負人は仕事を完成することに対する報酬の金額はあらかじめ決められているのですから、余分に費用がかかったとしても、原則として、当初決めた報酬以上の金額の支払いは請求できないと考えられます。
そうすると、今回のケースでは、X工務店の言い分は全くとおらないのでしょうか。
以下、次回に続きます。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun