株券発行前にした株券発行会社の株式譲渡の譲渡当事者間における有効性
会社法214条は、株式会社はその株式に係る株券を発行する旨を定款で定めることができ、会社法128条1項は、株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ、譲渡の効力を生じないと規定します。
会社法128条2項は、株券発行前にした株式譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じないと規定するので、株券発行前にした株式譲渡は、株券発行会社に対する関係で無効であることは明らかです。
では、株券発行前にした株式の譲渡は、どうでしょうか。会社法128条1項が適用されて、譲渡当事者間でも無効となってしまうのでしょうか。
この論点については、学説において有効説と無効説の対立がありましたが、最高裁(最高裁令和6年4月19日判決)は、仮に株券発行前の譲渡についても会社法128条1項の適用があり、譲渡当事者間でも無効であるとすると、株券発行会社に対する関係に限って無効とする同項2項が意味がなくなってしまうなどとして、有効説に立つことを明らかにしました。
株式譲受人からの株券発行会社に対する株券発行請求の可否
譲渡当事者間では有効であるとしても、会社法128条2項によれば、株券発行前にした株式譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じないとされていることから、株券発行会社に対して、株券を発行することを求めることはできないのでしょうか。
この点につき、最高裁は、同じ判決において、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができ、株券発行会社に対し、株券の交付を直接自己に対してすることを求めることができることを明らかにしました。
Last Updated on 2025年5月31日 by takemura_jun