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民法(相続法)改正ー自筆証書遺言の方式の緩和

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立川弁護士 竹村淳
弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

目次

民法(相続法)改正ー自筆証書遺言の方式の緩和

 

1 改正の必要性

 

現行法においては、遺言は民法に定める方式によらなければ、することができないとされ(960条)、民法が定める遺言の方式のうち、自筆証書遺言については、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないとされています(968条1項)。

遺言の効力の強さからすると、民法が厳格な方式を要求することは、理解できるところではあります。しかし、財産が多数あり、それを複数の相続人に個別に割り付けるような遺言を作成する場合、例えば、A銀行B支店の普通預金口座(口座番号:●●)はX,A銀行B支店の普通預金預金口座(口座番号:××)はY、C銀行D支店の・・・というような遺言を作成する場合、遺言の「全文、日付及び氏名」を自書することは、非常に労力を要することであり、ひいては、自筆証書遺言の利用を妨げる要因になっているのではないかとの問題意識がありました。

 

2 改正法の概要

 

改正法においては、相続財産の目録については自書することを要しないものとしました。ただし、その目録の各ペーシ(両面にある場合は、その両面)に署名し、印を押す必要があります(改正法968条2項)。

自書することを要しないということですので、パソコンで目録を作成することも、通帳のコピーや登記事項証明書を添付することもできるようになったということになります。

 

3 今後の課題

 

財産目録を自書せずに済むようになったというのは、手間の点で、大きな改善であるといえます。

しかし、今回の改正では、自筆証書遺言において様々な紛争を引き起こす理由となっている「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」とする規定(現行法968条2項)はそのまま残されました。

また、改正法についても、財産目録の各ページに署名押印が必要とされている関係で、財産目録が複数ページにわたっている場合に署名押印が漏れている目録があった場合や冊子上にして帯だけに押印があるような場合に、財産目録全体が無効となるのかあるいは署名押印がないそのページのみが無効となるのかという点は明らかではありません。また、押印もすべて同じ印鑑でする必要があるのかも法文上からは明らかではありません。これらの点は、改正法施行後に、裁判所で争われることになると思われます。

 

4 改正法の条文

 

民法968条1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年8月13日時点の法律に基づき執筆しています。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun

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