預金は相続開始により当然に分割されるというのが最高裁の立場ですが(最高裁昭和29年4月8日判決)、預金ではなく、現金はどのように取り扱われるのでしょうか。
この点につき、最高裁は、ある相続人が、被相続人が保管していた現金を引き継いで保管している他の相続人に対し、法定相続分に応じた支払いを求めた事案において、遺産分割までの間は、自己の法定相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないとの判決をしました(平成4年4月10日判決)。
この判決は、明示はしていないものの、現金は遺産分割の対象財産であることを前提としていることは明らかであり、そうすると、最高裁は現金と預金とで全く異なる取扱いをしていることになります。
現金と預金とで取扱いを異にする理由を見出すことは困難なように思われ、預金を当然分割とする昭和29年4月8日判決の考え方は、この判決の時点で、変更される可能性が高まっていたのかもしれません。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun