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全額払いの原則とは(労基法24条1項)

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

全額払いの原則とは(労基法24条1項)

労基法24条1項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定し、使用者は労働者に賃金の全額を支払わなければなりません。これを賃金全額払いの原則といいます。

もっとも、同原則については、同項但書により、法令に別段の定めがある場合、または、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数の代表者との労使協定がある場合については、賃金の一部を控除して支払うことができます。

では、同項但書以外の場合についても、控除が許される場合はないのでしょうか。

これについては、判例は、賃金の過払いが生じた場合にその後の賃金の支払いにおいて過払い分を控除して支払うことを認め(最高裁昭和44年12月18日)、また、使用者と労働者が合意をして使用者が労働者に対して有する債権と相殺をすることを認めています(最高裁平成2年11月26日)(これらの判例については別記事にて解説します)。

一方、組合費を賃金から控除すること(チェックオフ)については、労働者の利益のために行われることであるから労使協定は不要という見解が有力に主張されていましたが、判例は労使協定が必要であるとしました(最高裁平成元年12月11日判決)。

また、使用者が労働者に対し債権(例えば損害賠償請求権)を有する場合に、使用者が一方的に相殺することについても、これは許されるとの有力な見解がありましたが、判例は労基法24条1項違反となると判断しました(最高裁昭和36年5月31日判決)。

全額払いの原則にはいくつかの論点があるのですが、それについては別の記事で書いていきます。

弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成29年12月19日時点の法律に基づき執筆しています。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun