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法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

兼業禁止規定違反と懲戒処分

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

兼業禁止規定違反と懲戒処分


 当社のある従業員が勤務時間外に他社で勤務していることが判明しました。本人もその事実を認めています。当社の就業規則には「会社の許可なく社外の業務に従事してはならない」との規定があり、これに違反することが懲戒事由となっています。この従業員を懲戒解雇しようと思うのですが、問題はありますか?

A 
 兼業を禁止し、これに違反することを懲戒事由としている会社は多いと思います。しかし、兼業を理由に懲戒処分、特に懲戒解雇等の重い処分をする場合は注意が必要です。
 兼業を禁止する趣旨は、従業員の会社に対する労務提供が不能もしくは困難になること、または、企業秩序を乱すことを防止することにあると考えられます。逆にいえば、兼業の事実が認められるとしても、会社に対する労務提供に影響がなく、企業秩序を乱すこともないのであれば、懲戒事由該当性は認められないことになります。
 本設例では、兼業の事実は認められるようですが、当該従業員がいかなる内容の兼業をしていたのか、当該従業員の社内での地位などの具体的事実関係が不明です。まずはこれらの事実関係を確定し、そのうえで、懲戒事由該当性を検討する必要があります。
 裁判例では、女性事務員が午前8時45分から午後5時15分までの勤務終了後に、午後6時から午前0時までキャバレーで会計係等をしていた事案につき、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、会社への労務の誠実な提供に支障をきたす蓋然性が高いとして解雇を有効と判断したもの(東京地決昭和57・11・19)や、会社の部長が競業他社の取締役に就任したが、当該他社の経営には直接関わっていなかったという事案につき、競業他社の経営に関与する可能性が高く、また、部長職にあることからすると、会社の秘密を漏洩するおそれもあるとして、企業秩序を乱し、または、乱すおそれが大として、懲戒解雇を有効としたもの(名古屋地判昭和47・4・28)がある一方で、運送会社の運転手が年1、2回の運送のアルバイトをしていたという事案につき、職務専念義務違反に違反したとはいえないとしたものがあります(東京地判平成13・6・5)。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun