給与の銀行振込と労基法(労基法24条1項)
給与の銀行振込は一般的に行われていますが、実は労基法上の論点があります。
労基法上、「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定し、賃金を「通貨」で支払わなければならないとしているため(「通貨払いの原則」といいます。同法24条1項本文。「通貨払いの原則」については過去記事参照)、銀行振込はこれに反するのではないかという問題があります。
しかし、これについては、同項の但書において、厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができるとされており、この規定を受けて、労働基準法施行規則は、労働者の同意を得た場合には、労働者の指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金または貯金への振込みを認めています(同規則7条の2第1項)。
逆にいうと、労働者の同意を得ていなければ銀行振込は許されないのであって、例えば、使用者が特定の銀行の口座を振込先に指定する(口座開設を強制する)ことはできないということになります。
弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成29年12月15日時点の法律に基づき執筆しています。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun