法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。
ホーム企業法務(労働・労基) > 注目労働裁判例(労契法20条の「不合理と認められるもの」の意義及び同条違反の効果・大津地裁彦根支部・平成27年9月16日判決)

注目労働裁判例(労契法20条の「不合理と認められるもの」の意義及び同条違反の効果・大津地裁彦根支部・平成27年9月16日判決)

この記事を書いた人
立川弁護士 竹村淳
弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

目次

この記事は更新版が存在します。リンク先をご参照ください。

大津地裁彦根支部・平成27年9月16日判決

労働期間の期間の定めのある労働者と期間の定めのない労働者の労働条件の相違は不合理なものであってはならないとする労働契約法20条の解釈が争点となった裁判例です。

判決のポイントは以下のとおり。

1.
労契法20条の「不合理と認められるもの」とは「有期契約労働者と無期契約労働者間の当該労働条件上の相違が,それら労働者間の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察して,当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味する」

2.
「通勤手当が交通費の実費の補填であることからすると,通勤手当に関し,正社員が5万円を限度として通勤距離に応じて支給される(2km以内は一律5000円)のに対し,契約社員には3000円を限度でしか支給されないとの労働条件の相違は,労働者間の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察すると,公序良俗に反するとまではいえないものの,被告の経営・人事制度上の施策として不合理なものであり(被告は,正社員の場合は配置転換により長距離通勤が予定されていると主張するが,そうだとしても,正社員の下限の金額が,契約社員の上限の金額を上回っていることの説明にはならないはずである。),労働契約法20条の『不合理と認められるもの』に当たる」

3.
「労働契約法20条に反する労働契約の条件は,同条により無効となる」が、「特別の定め(同法12条参照)もないのに,無効とされた労働契約の条件が無期契約労働者の労働条件によって自動的に代替されることになるとの効果を同法20条の解釈によって導くことは困難というべきであるから,労働契約の条件が同条に違反する場合については,別途会社が不法行為責任を負う場合があるにとどまる」

以下、若干のコメント。

1.の部分は通説的な見解に沿ったもので目新しさはないといえばそうなのですが、3.の部分は学説上の争いのある点についての判断であり、注目されます。

また、事例的な判断とはいえ、2.の部分で、通勤手当につき、期限の定めの有無によって差異を設けることを違法と判断したことも、注目されるところです。通勤手当を支給している企業は、そのような通勤手当の体系となっていないか、チェックする必要があるのではないでしょうか。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun

contact

まずは法律相談にお越しください

法律相談は有料ですが、資力のない方は法律相談料の負担がなくなる場合がありますので、お気軽にご相談ください。

初回法律相談 30分5,000円(税抜き)

緊急性のある相談はお電話でご連絡ください

受付時間:月曜日~金曜日 9:30-18:30

個人情報保護方針

1 個人情報の取得

東京都立川市の弁護士竹村淳は、当サイトの利用者の個人情報(個人情報保護法が定義する個人情報を指します。以下、同じ)を利用目的の達成に必要な範囲で、適法かつ適正な手段により取得します。

 

2 個人情報の利用目的

弁護士竹村淳は、以下の目的の達成に必要な範囲で、当サイトの利用者の個人情報を利用します。
⑴ 案件(法律相談を含む)の処理及びこれに付随する連絡
⑵ 講演・セミナー等の弁護士竹村淳の活動に関する案内、その他弁護士竹村淳が提供する法的サービスに関連する情報の提供
⑶ 各種お問い合わせへの対応

 

3 個人情報の目的外利用

弁護士竹村淳は、法令に基づく場合または別途利用目的を通知・公表している場合を除き、ご本人の同意を得ないで、上記の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取扱いません。

 

4 個人情報の第三者提供

弁護士竹村淳は、法令に基づく場合を除き、ご本人の同意がない限り、個人情報を第三者に提供しません。

 

5 個人情報の開示、訂正、利用停止等

弁護士竹村淳は、保有する個人情報について、ご本人から、①利用目的の通知、②開示、③訂正、追加または削除、④利用停止、消去または第三者への提供の停止の請求があった場合は、個人情報保護法に則り、適切に対応します。

 

6 問い合わせ窓口

本個人情報保護方針に関するお問い合わせは、オレンジライン法律事務所 弁護士 竹村淳(電話:042-595-8920)にお願いします。

7 個人情報保護方針の変更

弁護士竹村淳は、必要に応じて、本個人情報保護方針を変更します。本個人情報保護方針を変更した場合は、当サイトに掲載します。