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非上場会社の場合の「募集株式を引き受ける者に特に有利な金額」該当性の判断方法(最高裁・平成27年2月19日判決)

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

1.
株式会社が新株発行または自己株式の処分をするとき、払込金額が「募集株式を引き受ける者に特に有利な金額」である場合、募集事項の決定は株主総会の特別決議によらなければならず、取締役は、株主総会において、その金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません。

2.
非上場会社の場合の「特に有利な金額」該当性の判断方法につき、最高裁は、以下のような見解を示しました(平成27年2月19日判決)。

非上場会社の株価の算定方法は様々な方法があり、どのような場合にどの評価手法を用いるかについて明確な基準はなく、また、算定にあたっては将来の収益等ある程度幅のある判断要素が含まれていることからすると、取締役会が新株発行時に客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず、裁判所が事後的に他の評価手法を用いたり異なる予測値等を採用して株式評価を行って「特に有利な金額」であるかどうかを判断するのは、取締役の予測可能性を害することともなり、妥当ではない。

したがって、非上場会社が株主以外の者に新株を発行するにあたって、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特に有利な金額」には当たらないというべきである。

3.
この判決によれば、今後、この論点が裁判で問題になった場合は、当事者が株式の「適正な評価額」を主張立証する(そして、裁判所が適正だと思う金額(評価手法)を採用する)のではなく、取締役が発行価額を決定するにあたって参考にした資料の合理性が争われることになると思われます。

「客観的資料に基づく一応合理的な算定方法」がどのレベルのものを要求しているのかは今後の裁判例の集積を待つことになりますが、「一応合理的な」という文言からすれば、かなり緩やかに判断されるのではないでしょうか。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun