判例は、労基法39条の年次有給休暇の権利は、労基法上の要件が満たされることによって当然に発生する「年休権」と、有給休暇を取得する時季を指定する「時季指定権」の2つによって構成されるとの立場をとっています(最高裁・昭和48年3月2日判決)。
このような立場に立った場合、発生した「年休権」は、労働者が「時季指定権」を行使することによって具体的な効果を生じることになりますが、「時季指定権」の行使の時期を制限することはできるのでしょうか。
この点、判例は、就業規則の前々日までに有給休暇の請求をしなければならない旨を定めていた就業規則に違反し、当日になって有給休暇の時季指定をしたという事案について、合理性を有するものであり、労基法39条に違反するものではないと判断しました(最高裁・昭和57年3月18日判決)。
では、労働者がなんらかの事情によりあらかじめ時季指定権を行使しないまま欠勤した場合に、事後的に有給休暇として取り扱うよう請求することはできるのでしょうか。
この問題については、使用者に時季変更権が認められていることに照らすと、労働者の時季指定は使用者において事前に時季変更の要否を検討し労働者にその告知をするに足りる相当の時間を置いてなされなければならないのであって、有給休暇の事後請求はできない(事後請求によって当然に休暇取得の効力が生じるものではない)とされています(東京高裁・平成6年3月24日判決)。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun