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地主が借地を第三者に売却した場合、借地人は借地権をその第三者に対抗できるか

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

地主が借地を第三者に売却した場合、借地人は借地権をその第三者に対抗できるか

 

1.民法の原則

 

民法は、賃借人は、賃借権の登記があれば、譲受人に対抗できると規定しています(民法605条)。しかし、逆にいえば、民法によると、賃借権の登記がなければ、賃借人は、譲受人に対抗できないということになります。

この点、賃借権の登記は、実際にはほとんど行われておらず、特約がない限り、賃借人から賃貸人に対し、登記手続きをするよう請求することもできないと考えられています。

2.借地借家法による修正

 

しかし、民法の原則によると、借地人は、容易に借地権を失うことになりかねません。

そこで、借地借家法では、借地権については、その登記がなくとも、土地上に借地人が登記されている建物を所有するときは、土地の譲受人に対し、借地権を対抗できるとの規定を設け、借地権者の保護を図っています(借地借家法10条1項)。

3.第三者に対抗するための要件

 

3-1.建物の存在

 

借地借家法10条1項の文言からすると、譲受人に対抗するためには、建物が存在する必要があります。逆にいえば、建物が存在しない場合、例えば、建物建築前については、譲受人に対し、対抗できないことになります。

では、建物を建築したが、その建物が滅失したときはどうなるのでしょうか。

この場合については、一旦は、借地権者が借地上に登記した建物を所有していたことが前提となりますが、そのうえで、建物が滅失した後に、借地権者が、借地上の見やすい場所に、滅失した建物を特定するために必要な事項、建物の滅失のあった日、建物を新たに築造する旨を記載した掲示をすることによって、譲受人に対抗することができます。ただし、この方法により譲受人に対抗できるのは、建物が滅失した日から2年間です(借地借家法10条2項)。

3-2.建物の登記の存在

 

借地借家法は、建物の登記が存在することを要件としていますが、この登記には、保存登記のほかに、判例上では、借地権者を所有者と記載した表示登記も含まれるとされた事案も存在します(最高裁昭和50年2月13日)。

では、建物の登記に記載された地番が土地の地番と異なっていた場合、この要件を満たすのでしょうか。

この問題につき、最高裁は、借地権のある土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在の地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまって、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであり、たやすく更正登記ができるような場合は、この要件を満たすと考えてよいとの立場をとっています(最高裁昭和40年3月17日)。

次に、建物の名義が借地権者の名義と異なっていた場合はどうでしょうか。

この問題につき、最高裁は、建物の名義が借地権者とは異なる場合は、この要件を満たさないとの立場をとっています(長男名義の保存登記がされていた場合につき最高裁昭和41年4月27日判決、妻名義の保存登記がされていた場合につき最高裁昭和58年4月14日)。一切例外が認められないのかは不明ですが、最高裁が厳格な立場をとっているのはたしかです。

4.対抗力を有しない場合は一切救済されないのか

 

では、建物の登記が存在しない場合、借地権者は一切、譲受人に対抗できないのでしょうか。

この点、最高裁は、権利濫用法理の適用によって、借地権者を救済する余地を認めており、最高裁昭和43年9月3日判決では、譲受人が、借地権者が対抗力を欠いていることを認識しつつ、これを奇貨として巨利を得るために、土地を譲り受けたうえで、借地権者に対し、建物収去土地明渡請求をしたという事案において、譲受人の請求を権利濫用としています。

立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年11月12日時点の法律に基づき執筆しています。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun