地代の増減額請求について
1.増減額請求の要件(借地借家法11条1項本文)
借地借家法11条1項本文は、地代の増減額請求権につき、「地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる」と規定しています。
同項を細かく見ていくと、①「土地に対する租税その他の公課の増減により」、②「経済事情の変動により」、または、③「近傍類似の土地の地代等に比較して」、契約内容となっている地代が「不相当」な金額となったときに、当事者が地代の増減を請求できるということになります。
では、①ないし③については、地代の金額が決まってから、ある程度の期間が経過することが必要なのでしょうか。
この点につき、最高裁は、地代の増減額請求が認められるには、不相当となれば足りるものであって、現行の地代が定められた時から一定の期間を経過しているか否かは、地代が不相当となったか否かを判断する一つの事情にすぎないとの立場をとっています(最高裁平成3年11月29日判決)。
2.増減額請求が行使できない場合(借地借家法11条1項但書)
ただし、以上の増減額請求権は、一定の期間、地代を増額しない旨の特約があるときは、行使することができません(借地借家法11条1項但書)。
逆にいえば、地代を「減額」しない旨の特約があったとしても、それは効力がないということになります。
3.増減額請求権の行使
増減額請求権の行使は、相手方に対する意思表示によってなされ、意思表示が相手方に到達したときから、増減の効力が生じる(増減された金額がその後の地代となる)とされています。
しかし、そうすると、地主が増額請求権を行使した場合、借地権者の想定する地代の金額(例えば月額10万円)が相当な金額であればいいですが、裁判所で争った結果、相当な時代は借地権者が想定していた地代の金額よりも高額な金額であるとの判断がされた場合(例えば月額15万円)、その判断が出るまでの間、借地権者が支払っていた地代の金額は足りなかったということになり(例でいうと月額5万円の不足)、その地代の不払いを理由に、地主から債務不履行を理由に、契約解除を求められる可能性があります。
このような場合に対応するため、借地借家法は規定を設けています。
増額請求については、当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代を支払うことをもって足りるが、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならないとされています(借地借家法11 条2項)。
相当と認める額とは、借地権者が相当と認める地代であると理解されていますが、その支払う金額が公租公課の額を下回る金額であるについては、判例は、公租公課の額を下回る額が地代の額として相当でないことは明らかであるとして、借地権者が相当であると考えていたとしても、債務の本旨にしたがった履行があったとはいえないとの立場をとっていることには注意が必要です(最高裁平成8年7月12日)。
一方、減額請求については、借地借家法によれば、当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代の支払いを請求することができるが、その裁判が確定した場合、既に支払を受けた額が正当とされた地代の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならないとされています(借地借家法11条3項)。
4.地代の自動改訂特約の効力
では、「地代は~年ごとに見直すものとし、見直しごとに、●%ずつ増額する」という条項を設けている場合、これは有効なのでしょうか。
この問題はかなり難しい問題を含んでいますので、別記事にて取り扱いたいと思います。
立川弁護士 竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年11月13日時点の法律に基づき執筆しています。
。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun