法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

敷金とは?(改正民法対応)

この記事を書いた人
立川弁護士 竹村淳
弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

目次

1.敷金の定義

 「敷金」ということば自体は、一般的に広く認知されていますが、これまでの民法では「敷金」を定義する規定が存在しませんでした。

 しかし、民法改正により、敷金とは「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃借権に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」という定義規定が設けられることになりました(改正民法622条の2)。

 この定義によると、「保証金」という名目であったとしても、「賃料債務その他の賃借権に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」であれば、法的には「敷金」として扱われますし、逆に、「敷金」という名目であったとしても、「賃料債務その他の賃借権に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」でないのであれば、法的には「敷金」ではないということになります。

2.敷金返還債務の発生時期

 次に、改正民法622条は、賃貸人は、①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または、②賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃借人に対し、受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならないと規定します。

 この規定によれば、敷金返還債務は、賃貸物の返還を受けたときに生じるので、賃借人が「敷金の返還を受けなければ、賃貸物を返還しない」と主張することはできないということになります。

 では、賃貸借契約においてしばしばみられる規定ですが、敷金は賃貸物の返還を受けた後、1か月以内に返金するというような敷金返金時期を先送りにする規定は有効なのでしょうか。

 これについては、改正民法622条は任意規定であると考えられることから、返還までの期間が不当に長期というような場合でない限りは、有効であると考えられます。

3.敷金返還債務発生前の敷金の効力

 改正民法622条は、賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務の履行をしないときは、敷金をもって、その債務の弁済に充てることができるとしました。

 一方、改正民法622条は、賃借人から賃貸人に対しては、敷金を当該債務の弁済に充てることはできないとしました。

4.まとめ

 以上のように、民法改正によって、敷金の定義や敷金についての基本的な法律関係が明文化されることになったのですが、その内容は、これまでの判例や一般的理解を明文化したものですので、これによって、実務に劇的な変化が生じることはないように思えます。

 しかし、この立法によって、敷金を巡る法律問題が完全に解決されたということはなく、例えば、賃貸人が敷金を賃借人の金銭債務の弁済に充てた場合であって、特約がないときに、賃借人が敷金を補充する義務があるかなど、未解決の問題は残っています。

立川の弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は平成30年12月8日に執筆しています。

敷金をも

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun

contact

まずは法律相談にお越しください

法律相談は有料ですが、資力のない方は法律相談料の負担がなくなる場合がありますので、お気軽にご相談ください。

初回法律相談 30分5,000円(税抜き)

緊急性のある相談はお電話でご連絡ください

受付時間:月曜日~金曜日 9:30-18:30

個人情報保護方針

1 個人情報の取得

東京都立川市の弁護士竹村淳は、当サイトの利用者の個人情報(個人情報保護法が定義する個人情報を指します。以下、同じ)を利用目的の達成に必要な範囲で、適法かつ適正な手段により取得します。

 

2 個人情報の利用目的

弁護士竹村淳は、以下の目的の達成に必要な範囲で、当サイトの利用者の個人情報を利用します。
⑴ 案件(法律相談を含む)の処理及びこれに付随する連絡
⑵ 講演・セミナー等の弁護士竹村淳の活動に関する案内、その他弁護士竹村淳が提供する法的サービスに関連する情報の提供
⑶ 各種お問い合わせへの対応

 

3 個人情報の目的外利用

弁護士竹村淳は、法令に基づく場合または別途利用目的を通知・公表している場合を除き、ご本人の同意を得ないで、上記の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取扱いません。

 

4 個人情報の第三者提供

弁護士竹村淳は、法令に基づく場合を除き、ご本人の同意がない限り、個人情報を第三者に提供しません。

 

5 個人情報の開示、訂正、利用停止等

弁護士竹村淳は、保有する個人情報について、ご本人から、①利用目的の通知、②開示、③訂正、追加または削除、④利用停止、消去または第三者への提供の停止の請求があった場合は、個人情報保護法に則り、適切に対応します。

 

6 問い合わせ窓口

本個人情報保護方針に関するお問い合わせは、オレンジライン法律事務所 弁護士 竹村淳(電話:042-595-8920)にお願いします。

7 個人情報保護方針の変更

弁護士竹村淳は、必要に応じて、本個人情報保護方針を変更します。本個人情報保護方針を変更した場合は、当サイトに掲載します。