借地借家法を深掘りして解説していく「マニアック借地借家法」第2弾。
今回のテーマは「建物の賃貸借契約の更新(民法と借地借家法26条の関係)」です。
建物の賃貸借契約には「期間の定めのある」ものと「期間の定めのない」ものがあります。
そして、「期間の定めのあるもの」には、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約があります。
これらの建物賃貸借契約のうち、借地借家法26条は「期間の定めのある」「普通建物賃貸借契約」の更新について定めるものです。
「借地借家法の適用を受ける建物の賃貸借契約とは?」のコラムで解説したとおり、民法と借地借家法は、建物の賃貸借契約について、一般法と特別法の関係にあります。
一般法である民法においては、期間の定めのある建物の賃貸借契約は、期間が満了することによって終了し(民法622条、民法597条1項)、ただし、期間満了後も賃借人が使用収益を継続し、これに対して賃貸人がその事実を知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借契約と同一の条件で賃貸借契約をしたものと推定するとされています(民法619条1項)。
これに対し、特別法である借地借家法26条においては、期間の定めのある建物の賃貸借契約は、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新しない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の賃貸借契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされ、その期間は、定めがないものとされます(借地借家法26条1項)。
期間満了後も賃借人が使用を継続する場合に、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同様に、従前の賃貸借契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条2項)。
このように、当事者の合意ではなく、法律の規定によって契約が更新されることを「法定更新」といい、それ自体は、民法も借地借家法も変わりはありません。
違いは、民法は、「契約を更新したと推定する」のに対し、借地借家法は、「契約を更新したとみなす」とされていることです。
この違いは、民法の「推定する」の場合は、契約の更新が行われたということが推定されるだけなので、契約の更新は行われなかったということを証明できれば、更新は否定されるのに対し、借地借家法の「みなす」の場合は、そのような主張を認めないということにあります。
つまり、借地借家法の方が、賃借人を保護することになっているのです。
借地借家法26条のさらに細かい内容については、次回のコラムで解説します。
Last Updated on 2024年1月9日 by takemura_jun