立川の弁護士「竹村淳」が専門的観点から執筆 法律コラム

強制わいせつ罪の成立と性的意図

コラム2017-11-26

強制わいせつ罪の成立と性的意図

強制わいせつ罪について規定する刑法176条は「十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」との条文であり、条文上は、わいせつな行為をするにあたって、行為者に性的な意図があることを要求していません。

しかし、最高裁は、その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要するという立場をとっていました(最高裁昭和45年1月29日判決。なお、この判決の事案は、報復目的で女性を裸にし写真撮影をしたというもの)。

この最高裁の考え方に対しては、強制わいせつ罪で保護している利益は被害者の性的自由なのであるから、性的意図の有無は犯罪の成立に無関係なはずであるという疑問がかねてから示されていました。

とはいえ、この最高裁判例は変更されないまま現在まで至っていたのですが、平成28年10月27日に大阪高裁が注目すべき判決をしました。

この事案は、被害女児(当時7歳)に対し、被告人の行為は、陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害女児の陰部を触るなどしたというものであって「わいせつな行為」の存在は認定できるできるものの、被告人が、このような行為に及んだ理由は、インターネットを通じて知り合った第三者から金を借りようとしたところ、金を貸すための条件として、女児とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像を送信するように要求されたことから行ったものであって、真実は金を得る目的だけで、自分の性欲を刺激興奮させるとか満足させるという性的な意図はなかったと主張するところ、証拠関係からすると、金を得る目的だけであったという被告人の弁解も排斥できないというものです。

この事案において、大阪高裁は「強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され、同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば、強制わいせつ罪が成立し、行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべき」として、被告人に性的意図は認定できないとしても、強制わいせつ罪が成立するという判決をしたのです。

この大阪高裁の判決に対しては上告がされ、11月29日に最高裁大法廷の判決が出ることになっています。

私見ですが、過去の最高裁判例の考え方に合理性を見出すことは困難であり、判例変更の可能性は極めて高いと考えます。

TOPへ