18歳成人と養育費の支払終期
成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が今国会で成立する見込みです。
この引き下げにより様々な影響が生じると思いますが、私、弁護士竹村淳が注目しているのは、親が離婚している場合の子どもの養育費の取扱いです。
民法上、養育費という文言は存在しません。法律的には、民法877条1項の「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という規定により、親権者でない親も子どもの扶養義務を負っており、この扶養義務の履行として支払うもののことを養育費と呼んでいるということになります。
民法766条が「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定するとおり、養育費は、本来的には、親同士の協議によって定められるものです。したがって、金額や支払期間については、協議がまとまればそれによることになります。
問題は、協議がまとまらなかった場合あるいは協議ができない場合ですが、この場合は、家庭裁判所が審判によって定めます(民法766条2項)。
では、審判によって養育費が定められる場合、その支払終期はいつになるのでしょうか。
これについては「成人に達するまで」とされるケースが多いようです。
この前提にあるのは、成人に達すれば、民法上、単独で契約ができるのだから、親の扶養を受けることなく生計を立てることは可能であるはずであり、また、そうすべきだという考え方と理解できます。
この考え方によれば、成人年齢が20歳が18歳に引き下げられれば、支払終期は18歳ということになりそうです。
もっとも、養育費支払義務の根拠は、前記のとおり扶養義務なのですから、親の扶養(養育費の支払い)なしに生活を保持することができるかという観点から考えるべきであり、成人に達したという事実を、養育費の終期を定めるにあたって殊更に重視することも妥当であるとは思えません(なお、これまでも、諸般の事情を考慮して、20歳以降も養育費の支払いを認めた例もあります)。
一定の目安が必要ということで、支払終期を成人になったときとすることは必ずしも不合理とはいえず、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることによって、原則的な支払終期が20歳から18歳になるのではないかと予想しておりますが、家庭裁判所には、養育費支払義務の根拠に立ち返り、親の扶養なしに生活を保持することができるかという観点からの丁寧な審理を期待したいところです(さらにいえば、家庭裁判所の審判になる前に、親同士、他の点ではいかに激烈に対立しようとも、子どもの利益に配慮するという点においては共に考え、養育費の支払いでは合意できることが望ましいと思っています)。
当記事は平成30年5月27日時点の法律に基づき執筆しています
Last Updated on 2018年5月27日 by takemura_jun