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法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

裁判官の身分保障と身分を失う場合(心身の故障と弾劾)について

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

裁判官の身分保障と身分を失う場合(心身の故障と弾劾)について

裁判が公正に行われるためには、裁判が独立して職権を行使することができることが必要です。そこで、憲法は、裁判官が罷免される場合を、①裁判により心身の故障のために職務をとることできないと決定された場合か、②公の弾劾による場合の2つに限定しています(憲法78条)。

①については、裁判官分限法という法律があり、同法は「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合」を免官事由としています(1条1項)。

この「裁判」は、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官については、高等裁判所が管轄権を有しており、最高裁判所と高等裁判所の裁判官については、最高裁判所が管轄権を有しています(3条)。

高等裁判所における裁判は5人の裁判官の合議体で、最高裁判所における裁判は大法廷で取り扱われます(4条)。

②については、国会法と裁判官弾劾法に規定があり、裁判官弾劾法は「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき」と「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき」の2つを罷免事由とします。

裁判官の罷免の訴追は、国会議員のなかから選ばれた訴追委員で構成される訴追委員会によって行われます(国会法126条1項)。

このように訴追は訴追委員会によって行われるものですが、裁判官に弾劾による罷免事由があると考えた場合は、誰でも、訴追委員会に対して、弾劾裁判所に裁判官の罷免の訴追をするよう請求することができます(弾劾法15条1項)。

罷免の訴追を受けた裁判官は、本人が辞職を申し出たとしても、弾劾裁判所の裁判がされるまでは、辞職することができません(弾劾法41条)。

弾劾裁判所は、衆議院議員と参議院議員各7名(合計14名)の裁判員で構成され(弾劾法16条1項)、衆議院議員と参議院議員それぞれ5名以上の出席がなければ、審理と裁判をすることができないとされています(弾劾法20条)。

罷免の裁判は、審理に関与した裁判員の3分の2以上の賛成が必要であり(弾劾法31条2項)、裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免されます(弾劾法37条)。

弾劾裁判によって罷免された場合、弁護士や検察官となる資格を失います(弁護士法7条2号、検察庁法20条1項2号)。つまり、罷免の裁判がされると、法曹資格を失うことになります。

弾劾裁判は不服申し立ての手段はありません。

しかし、「資格回復の裁判」というものがあり、「罷免の裁判の宣告の日から五年を経過し相当とする事由があるとき」または「罷免の事由がないことの明確な証拠をあらたに発見し、その他資格回復の裁判をすることを相当とする事由があるとき」は、弾劾裁判所は、罷免の裁判を受けた者の請求によって、資格回復の裁判をすることができるとされています(弾劾法38条)。

Last Updated on 2024年8月1日 by takemura_jun