強制わいせつ罪の成立に性的意図は不要(最高裁平成29年11月29日判決)
最高裁は、昭和45年に強制わいせつ罪の成立要件として、その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図が必要との見解を示しました。その後、この見解は維持されてきたのですが、平成28年10月27日に大阪高裁が強制わいせつ罪の成立に性的意図は不要との判断を示したことから、この見解の妥当性につき、最高裁で改めて審理されることになりました(詳細は当コラムの過去記事参照)。
そして、平成29年11月29日、最高裁大法廷は、過去の見解を改め、強制わいせつ罪の成立に性的意図は不要との見解を示しました(最高裁の判決文はこちらを参照)。
最高裁の判決の概要は以下のとおりです(裁判官全員一致の意見)。
もともと、性的な被害にかかわる犯罪規定あるいはその解釈は、社会の受け止め方を考慮しなければ、処罰対象を適切に決することができないという特質があるところ、昭和45年判決は当時の社会の受け止め方などを考慮して、強制わいせつ罪の処罰範囲を画するものとして、性的意図のもとに行われることを一律に求めたものと理解できる。
しかし、近年、性的な被害にかかわる犯罪についての法定刑の引き上げや新規立法が行われていることをふまえると、性的な被害にかかわる犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方は、昭和45年当時から変化したといえる。
今日では、強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべ
きであって、性的意図を必要とする昭和45年の解釈は、その正当性を支える根拠を失ったというべきである。
もっとも、行為そのものが持つ性的性質が不明確で、その行為が行われた際の具体的状況等を考慮に入れなければ、その行為に性的な意味があるのか、すなわち「わいせつ行為」にあたるのか評価しがたいものがあるのはたしかであり、そのような場合に、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合がありうることは否定できない。
しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは妥当ではなく、昭和45年判決の見解は変更されるべきである。
以上、概要終わり。
私見としては、昭和45年判決当時の社会が強制わいせつ罪の成立には性的意図とすべきという限定的な解釈を要請してたのかについては疑問が残るところではありますが、結論としては、妥当な判決だと思います。
Last Updated on 2017年11月29日 by takemura_jun