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法律コラム 弁護士竹村淳が様々な観点から不定期で掲載する法律コラムです。

「指定薬物」ってどういうもの?

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立川弁護士 竹村淳

弁護士 竹村 淳 

オレンジライン法律事務所の代表弁護士。
東京都立川市を中心とした地域で活動している弁護士です。
労使紛争、債権回収、賃貸借契約、契約書作成などの企業の法律問題のほか、相続問題や交通事故など個人の法律問題も幅広く法的サポートを提供しており、クライアントのニーズに応じた柔軟なアドバイスを行っています。弁護士としての豊富な経験を活かし、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応。ブログでは、日々の法的トピックや事例紹介を通じて、わかりやすく実務的な法律情報を提供しています。

今回は「指定薬物」について解説します。

東京や大阪で、グミを食べた後に体調不良を訴える人が続出しているそうです。

問題となっているグミには、合成化合物「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」が含まれており、この合成化合物は、大麻成分と似ているものだそうです。

しかし、この合成化合物は、2023年11月21日現在、「指定薬物」ではなく、厚生労働省は「指定薬物」に指定するよう検討するとのことです。

さて、この「指定薬物」とは、用語自体は聞いたことがある方は多いと思いますが、実際は、どういうものなのでしょうか。

この「指定薬物」は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という長い名前の法律に定義があります。

この法律の2条15項を見てみましょう。

この法律で「指定薬物」とは、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。

と、やたら長くわかりづらいのですが、短くすると、「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物」として、「厚生労働大臣が」「指定するもの」となります。

「厚生労働大臣が指定するもの」は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令」に定められています。膨大な数のものが指定されているので、興味のある方は検索してみてください。

指定薬物に指定されると、原則として、製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受けすることが禁止され(法76条の4)、また、広告をすることも禁止されます(法76条の5)。

これに違反すると、犯罪となります(法83条の9、84条、85条)。

この点、冒頭のニュースに戻りますが、2023年11月21日時点においては、「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」は「指定薬物」に指定されておらず、これが含まれる「大麻グミ」を所持していたとしても犯罪とはなりませんが、指定された後にも所持していた場合、犯罪となってしまうことに注意が必要です。もし持っているという場合は、直ちに廃棄しましょう。

このように「指定薬物」を所持することは犯罪なのですが、「指定薬物」と同等に危険な成分が含まれる物品が出回っているのに、「指定薬物」に指定されるまでは、行政はなにもできないのでしょうか。

このような場合についても法律に定めがあり、厚生労働大臣または都道府県知事は、その物品の製造者などに対して、指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物であるかどうかについて、検査を受けることを命じることができ(法76条の6第1項)、検査を受けるまで、製造や販売などを禁止することができます(同条第2項)。

そして、これらを実行するために必要があるときは、立ち入り検査をすることもできます(法76条の8)。

なお、検査を受けることを拒否したり、製造販売などの禁止命令を破った場合は罰則があります(法86条、87条)。

以上、「指定薬物」についての解説でした。

なお、この解説は、2023年11月21日現在の法律に基づく解説であり、その後の法律改正によって内容が正しくなくなっている可能性があることにはご注意ください。

Last Updated on 2023年11月23日 by takemura_jun