特定記録や簡易書留ではなく内容証明で送ったほうがいいのはどういう場合?
内容証明。
この名称自体はかなり認知度が高いと思われますが、どのような場合に使うべきかという点については、あまり(ほとんど?)正確な理解がされていない印象があります。そこで、今回の記事では、内容証明はどのような場合に使うべきものなのかについて、解説します。
まずは、日本郵便のホームページの内容証明の説明を見てみましょう。
日本郵便のホームページでは、内容証明とは「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度」であり、「当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません」と説明されています。
もっと簡単にいえば、内容証明とは、日本郵便がどういう内容の文書を送ったのかをいつ誰から誰に送ったのかを証明してくれるものであり、逆にいえば、それ以上の効果はないものです。
しばしば「口で言ってもメールで催促してもお金を支払わないから内容証明を送る」というようなフレーズを耳にしますが、お金を支払えという内容証明を送ったとしても、それは「●年●月●日に●に対してお金を支払えと請求した」という事実を日本郵便が証明してくれるだけであり、心理的な圧迫を与えるという効果はあるのかもしれませんが、法的には(時効を中断させるための催告でもないかぎり)意味がない行為であるといえます。
では、内容証明はどのような場合に使うものなのでしょうか。
これは、内容証明が「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度」であるというところから考える必要があります。
最も重要な使い方は「意思表示が到達した証拠を残す」という場面です。
民法によれば、(本当は不正確な表現ですが、)意思表示は相手方に到達することによって効力が発生します。逆にいえば、相手に到達していなければ、意思表示の効力は発生しないのです。
これがどういったことを意味するのかといえば、例えば、ある契約を解除したいと考えて解除の通知を発送したとしても、相手方が「そのような解除の通知は受け取ってない」と主張した場合、解除をする側が、解除の通知を送り、それが相手方が到達したことを証明できないかぎり、解除の効果は主張できないのです。
この点、簡易書留は送った郵便が受け取られたかどうかを証明できますが、どのような内容の文書を送ったのかはそれだけでは証明されないため、受け取った側から「たしかに郵便は受け取ったが、その内容は解除についての通知ではなかった」という反論をされてしまう可能性があります。また、特定記録郵便も、郵便が郵便局で引き受けられ、宛先のポストに投函されたことまでは証明できますが、どのような文書を送ったのかまでは証明されないので、簡易書留と同様の反論を受ける可能性があります。
そこで、相手方にいかなる意思表示をしそれが到達したのかを確実に証明する必要がある場合には、簡易書留や特定記録郵便ではなく、内容証明を送るべきということになり、逆にいえば、そうではない場合は、あえて内容証明を送る必要はないということになります。
ところで、内容証明を送る場合、受け取りを拒否されることがしばしばあります。
これについては対応策があるのですが、ここは弁護士のノウハウの部分ということで、個別にご相談ください。
立川の弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所)
当記事は、平成30年4月9日現在の法律に基づき執筆しています。
Last Updated on 2018年5月3日 by takemura_jun